監督の言葉 Massimiliano Allegri篇①

筆者がJuventusの試合を観るきっかけとなった監督、Allegriが地元紙Corriere della Seraのインタビューに応じていて、内容がとても興味深そうだったので備忘録的にまとめてみた。なお、筆者はイタリア語には疎いのでイタリア語(原文)→英語(翻訳)→日本語(翻訳)という過程で原文の記事をなんとか自分なりに読み解いて要約してみた。

 

 

Q1.外側からカルチョを見てどう感じる?

Allegri :特筆すべきことが2点ある。一つめはアフリカ人選手の存在がカルチョをよりフィジカルなものに変化させていること。二つめは、カウンター攻撃の再来を評価していること。

 

Q2.カウンター攻撃?

Allegri:そうだ。我々はグアルディオラのことを誤解していたんだ。彼のカルチョは誰にでもできるものではなかった。偉大な時代を築いたバルサは3人の偉大な選手によって、相手を敵陣に収め込み、中盤の上下を駆使し、最終ラインをハーフラインまで押し上げた。それを可能にするにはイニエスタシャビそしてメッシが必要なんだ。

 

Q3.それでカウンター攻撃というのは?

Allegri:この話題は非常に繊細なものだ。サッキがボールを保持し積極的な姿勢を持つことを語るのを聞いているとウンザリする。というのも私が感銘を受けたサッキのカルチョというのは、サン・シーロレアル・マドリー相手に5-0で勝利したときのようなカルチョだからだ。あのときマドリーが緩やかにボールを回してる一方で彼はまっすぐに縦にプレイしたんだ。あれは縦型のミランだった、まさにカウンター攻撃だったんだ。そしてそれは簡単にできるものではないが、上手く行けばスペクタクルなものだ。

 

Q4.クロップのカルチョについてどう思う?

Allegri:基礎的な部分は真に現代的なカルチョと言えるだろう。それは3枚のFWで継続的にDFラインにプレスをかけ限定したエリアに閉じ込めるものだ。そしてそれはシュートを打つ機会を継続的に与え、サイドのスペースを求めるのではなく相手の後ろのスペースを狙う。このようなプレー原則が発明されたことをなぜ我々が恥じないといけないのか私には全く理解できない*1。引き分けの価値が勝利の半分だったころに、引き分けを狙って自分たちの守りを固めるのが一理あったように、守備フェーズから攻撃を導き、スペースの解釈を変えるというのもまた一つの方法なのだ。

 

Q5.他になにか興味深い発見は?

Allegri:選手の重要性と監督の真の役割だ。

 

Q6.真の役割とはどういうことですか?

Allegri:スキームなんて存在しない、人工知能なんて存在しない。大事なのは監督自身の目だ。1月からベンチにタブレットが設置されるらしい。曰く、最も頻度の高いパスが分かるんだそうだ。何をするためにタブレットを置く?私が直前にすでに見たものを一文に要約するためだ。カルチョはフィールドでの話であって、宇宙での話ではない。必要なのは日曜日に作法が分かっていて仕事ができる監督だ。その日、技術者になればいいんだ。そこから先は選手次第だ。選手の多様性にかかってる

 

Q7.カルチョのシンプルさと役割の論理とはどういうことですか?

Allegeri:例をあげよう。クリバリ、マノラス、アルビオル。私もよく尊敬するアンチェロッティによって鍛錬された偉大な3人の選手だ。中央の教授は技術的特性の高いアルビオルだ。状況を読む力に長けていて、行動を進行させる直観もあった。クリバリはフィジカル的な側面では並外れていた、他の側面では劣る。マノラスは対人能力に置いては優秀だったが、集団的なアイディアではクリバリより劣っている。つまり、私のなかでカルチョとは「これ」を理解することだ。個々の特性を理解し、特定のシチュエーションに適用させることだ。選手と選手を統合させ、完成させること。これは数字やタブレットアルゴリズムが教えてくれるわけではない。

 

Q8.今、(カルチョに)足りないものは?

Allegri:監督だ。我々は長い間直観で生きてきたが、今はそれを構築するときだ。監督を生業としてるものがガッリアーニやマロッタが自分の側につくかどうか考えるのは無駄だ。以前にも言ったように、未来に向けてオープンとなり、新たなリーダーが必要なんだ。今はリーダーがいない。リーダーがいなければ後が育たない。名を挙げるとしたらリッピカペッロだ。彼らはすべてを成し遂げたがまだ若い。仲良しごっこはもうたくさんだ。実際、ビッククラブは誰に監督を任せていいのか困惑している。彼らに助けてもらうためにも本気でお願いするべきだ。

 

Q10.代表が調子をあげてきましたけど、それについては?

Allegri:この前サルサーノ*2会ったので、マンチーニにおめでとうと伝えてくれと言っといた。彼は素晴らしい仕事をしてる。なぜか分かるか?

 

Q11. どうしてですか?

Allegri:たしかに彼はずっと素晴らしかったですが、今の彼は別人です。より厳しく、真剣になりました。

 

Q12.昔は違ったのですか?

Allgeri:しかし、もちろんそうだったのですが、今は変わりました。彼はみんなとカルチョについて話し、そしてシンプルにプレイします。彼はマエストロである一方、我々は教授の世界なのです。

 

Q13.例えば?

例えではなく、実際の思い出を紹介しよう。今年の夏、ガレオーネとジャンパオロと会ってカルチョについて意気投合していたときだ。私はジャンパオロにこう言った。『マルコ、アドバイスをやるわけではないが一つだけ言わせてくれ。君はミランにいるんだ。誰もがミランで指揮を執れるわけではない。チームを人気者で固めるな、それは結果として君を2つに分断することになるだろう。ふざけることのできるスタジアムではない。セントラル・ミッドフィルダーが欲しいのか?言っておくが、それはスソではない。しかしスソは偉大な選手だ。統合して適応させるんだ。カルチョはみんなのものだ。望んでいるレジスタがいないなら、2枚のセントラル・ミッドフィルダーを使うことは避けられないはずだ。』と。重要なのは選手のクオリティであって、監督の能力に関係なくそこは妥協してはならない。そしてその点こそが我々、カルチョの問題点なのだ。

 

 おしまい。

 

ソース:

www.corriere.it

 

*1:おそらくボールを保持することを美学とする連中に対するイヤミ?

*2:イタリア代表監督マンチーニコーチングスタッフの一人