【ネタバレあり】98%くらい理解した筆者がTENETを語る【ネタバレあり】

 

 

早速、TENET観てきました(2回)!!

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チケットと頂いたクリアファイル

とうとう、鬼才クリストファー・ノーラン監督(以下、ノーラン監督)の最新作であるTENETが日本で9/18に公開されました!『どうせ今回も2回は映画館で観に行くだろう!』*1と踏み、

19日は大阪市内にある普通のIMAXで鑑賞、翌日に万博記念公園にある109シネマの画角フルスケール*2で見られるIMAXレーザーGTで2回目の視聴をするというパワープレイを決行。おかげさまでノーラン・ワールド酔いは今でも微かに心地よく残っております。

 

相変わらずのノーラン・ワールド!!難しく考えすぎないで!

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1回目鑑賞後に購入した900円のパンフ。めちゃくちゃ読み応えあります!

さて、今回のTENETは圧倒的な脚本の難しさというのが公開前からたびたぶ話題になっておりました。なにせ、主演のジョン・デイビッド・ワシントンはあまりの難しさに脚本をなかなか理解できず何度もノーラン監督に質問を投げかけたということがあったそう。ノーラン監督は、親身に質問に答えながらも「そんなに(脚本を)分析しなくていい」、何回かリテイクすることがあったときには「シーンを信頼して」とにっこりした表情でアドバイスしたという。*3

たしかに量子力学を元にした物理法則やSFギミック、専門用語、造語などはたくさん出てきます。また、直感的に理解するのが難しいシーンもあるかと思います。しかし、ノーラン監督の撮る映画は小難しいギミックや設定があっても最終的には映像音楽分かりやすい主題で誰でも楽しめるような映画になってると私は力説したい。

よってこのブログでは映画本編のストーリーの大まかな謎や用語やギミックを自分なりに解読しながら、自分が感じ取ったテーマは何だったのか、劇中の印象的だったセリフなどを語っていきます!どうかお付き合い頂ければ幸いです。

 

【以下ネタバレ含みます】

 

TENETの謎を語る

①TENETの世界観(結論)

 結論から言います。TENETのストーリーとは

世界を救うことが確定してる運命のループの1ループを描いた物語』です。

劇中でも<主役(名も無き男)>とニールの会話で言われてた通りタイムトラベルではありませんし、重要なのは運命を変えて世界を救ったわけではないということです。TENETの世界観では宿命論(運命論ともいう)がベースとなっております。運命はすでに決まっていて変更できないというやつです。これは劇中何度もニールが口にする「What's happaned happaned(起こったことは変えられない)」というセリフからも示唆されており、オスロ空港で自分と対峙するのも、そもそも回転ドアの仕組みも、私は前提として宿命論があるからこそ成立するギミックだと思っています。

つまり、何度も何度も繰り返される世界を救うループの1ループを切り取ったのが今回の映画。現代風の言葉でさらにかみ砕いて言えば『ハッピーエンド確定の物語』を我々は鑑賞していたのです。しかし、ここで重要なのは『我々(視聴者)』『<主役(名も無き男)>』その結末を知らないということなんです。つまり、<主役>とはまさに現実世界にいる我々の投影なのです。そして、この運命を知らざる無知なる人と、運命を知る男との邂逅がラストの感動を生むのです。

 

【余談:自己投影型主人公について】

これはゲームや小説などの主人公によく使われてる手法で、主人公をなるべく没個性なキャラクターにして、ゲームのプレイヤーや小説の読み手作品の主人公に自己投影させやすいようにするといったものだ。有名なところで言えばゲームのドラゴンクエストがその典型例である。記憶する限り、これはノーラン監督の新たな試みのようにも思える。記憶が10分しかない持たない主人公だったり、過去にトラウマを抱え自分を責め続ける敏腕スパイ、元NASAパイロットで2児の父親であるパパ主人公。とにかくノーラン監督は自身のオリジナル脚本では主人公たちに強烈な個性を与えてきたのは明白だ。強いて言うなれば前作のDunkirkは戦争に巻き込まれた若い兵士たちを描くために<没個性>な性格を与えたが、これは戦争のリアルを伝えるためであって、視聴者を兵士に自己投影させたかった意図があったかどうかは議論の余地がある。

 

②TENETとは何か?

TENETは(世界(未来人)を救う=世界を逆行させる)ミッションに参加する者同士が通じ合うための合言葉&ポーズ。また、ミッションそのもの。

実際に使われてたシーンは<主役(名も無き男)>がムンバイにある、サンジェイ・シンのマンションに忍び込んで彼を拘束して尋問していたときに後ろからプリヤがTENETという合言葉を会話に交えつつ両手の指をクロスして、<主役(名も無き男)>が勘づく。 

 

回転ドアの仕組み

赤い扉から入って、青い方から出る→主観的に時間の流れが逆行する

青い扉から入って、赤い方から出る→時間の流れが順行する

 

また、逆行のときは不協和音的な無限音階のBGMが流れる。

 

大事なのは青い方から出てくるときは、自分の見えてる世界が逆行するのであって時間が順行してる人から見たら逆行してる対象だけ逆再生のような動きをしてるということ。

<参考>

空港での戦闘シーンや、カーチェイスのシーン等々

 

 

アルゴリズムとは?

時間の流れる向きを完全に逆行させるアルゴリズム(≒未来兵器)。9つのパーツから成り、サイタープルトニウム241(と思われていたもの)を手に入れたことで完成した。最後のスタルスク12での回収目標物。セイターの死によって起動する

 

⑤そもそも未来人の目的とは?

 

・2つの派閥(考察)

派閥が2つ存在すると私は考える。そしてこの2つの派閥が争ってるのが未来の戦争。この2つの派閥間では根本的に『祖父のパラドックス』に関する見解・解釈の相違があると思われる。そこの見解・解釈の違いからそれぞれ派閥P【パラレルワールド派】派閥L【ループ派】とする。(注意:劇中に明確な派閥の名前は出てこない))

 

パラレルワールド派は、アルゴリズムの起動により逆行世界が成立したときに祖先達が死んでも現タイムラインの子である自分らは死なないと主張する。どこかの並行宇宙に祖先達がいない新たなパラレルワールドが生まれるだけと考えている。

パラレルワールド派と思われる登場人物】フェイ(<主役>をスカウトした男)、プリヤ、セイター

【根拠となるセリフ】逆行時間でコンテナに乗ってるときにニールが未来人について<主役>に説明するシーン。正しいセリフ見つけ次第更新します。

 

ループ派は、アルゴリズムにより祖先たちを抹殺した場合、子である未来人にも影響を及ぼし過去現在未来の全人類が滅亡すると主張し、パラレルワールドは生まれないと考える。そして逆説的に自分たちが現在存在している以上、アルゴリズムが起動することは運命的にな起こりえないことを『知っている』(信じているのほうが正しいかも)

【ループ派と思われる登場人物】未来の<主役>、ニール、マヒア(操縦士)、アイブスなど

【根拠となるセリフ】同上のシーンで、ニールの話を聞いていた<主役>が直感的に自分らが今ここで存在してるということはアルゴリズムは起動されていない裏付けになるのではと気づく。ニールはその考えに対して「楽観的に言えばそうだ」と肯定する。

 

・それぞれの派閥の目的(考察)

派閥P【パラレルワールド派】

→水面上昇による世界滅亡(≒大洪水)から逃れるために過去(完全な逆行世界)に生きることを選んだ。アルゴリズムの起動が目的(=サイターにアルゴリズムのパーツを集めさせて最終的に死んでほしい)。

 

派閥L【ループ派】

アルゴリズム起動反対派アルゴリズムを9つのパーツにバラして過去の様々な場所に隠した。派閥Pの目的を阻止することが目的。ボスはどうやら未来の<主役>らしい。

 ⑥最後、ニールは死ぬのか?ニールの正体は?

 挟撃作戦では仲間(<主役>とアイブスの回収班)のバックアップに徹し、最後の最後で活路を見出すために死にに行きます。しかし、それがあの世界でのニールの美しくも哀しい運命なのです。ニールは劇中で展開される時間軸よりも未来から長い時間をかけて逆行してきた未来人ですべての結末を知っている。未来では<主役>とは友人関係を築いてるようで、その関係性からミッションの前にダイエットコークを飲む習性などを知っていたのだろう。また、知っている情報を隠すのはあくまでミッションを成功させるためで余計な情報を<主役>に与えて辻褄を狂わせないため。

自分の死によってぎりぎりのところでミッションが上手くいく結末を知ってたニールと、最後までその彼のことをなにも知らなかった<主役>の会話のやりとりはグッと来ます。

 

Neil:For me, I think it's an end of a beautiful freindship

ニール:どうやら、俺にとってはここで美しい友情が終わる

 

The Protagonist : But for me it's just the beginning.

 <主役>:でも俺にとってはまだ始まりにすぎない

 

 

友情の起点と終点を重ねてきたあのシーンは涙腺崩壊しました。このニールという男の信念こそがこの作品の最大のテーマだと私は考えます。

 

私たちはなにも知らない運命の<主役>.... 

The Protagonist : But can we change things if we do it differently?

<主役>:やり方を変えたら結果を変えられないのか?

 

Neil:What's happened happaned. Which is an expression of fate in the mechanics of the world. It's not an excuse to do nothing.

ニール:起こったことは変えられない。これは世界の仕組みである運命のことだが、だからといって何もしなくていいっていうことじゃないんだ

 ニールの最期を知った<主役>がどうにか助ける方法はないのか尋ねるシーン。

 

もし、私たちが自分の人生をすべて知っていたとするとどうなるだろう。私が成功する未来を知ってたらどうせ成功するんだと阿呆のように毎日を過ごすだろうし、逆に散々な人生が運命で決まっていたなら絶望してなにも行動を起こさないかもしれない。しかし、世界を救った『運命を知る』ニールから言わせると、そのような『運命』に対する態度は間違っているという。どんなことが待ち受けようと、運命を知っていようがいまいが自分の信念(ニールの場合は仲間を守り、世界を守ること)に従って行動をするニールのブレない真っすぐさには脱帽です。最高にかっちょいいキャラでした!

そしてTENETはの主題とはまさに冒頭に説明したとおりシンプルで、『友情と信念』だと思います。

 

おわりに

今回はおおまかなストーリー、用語、テーマ(というか主にニールのカッコよさについて)について書いてみました!本当はキャットやセイターについても書きたかったのですが、今回は割愛させて頂きます。最後のセイターと<主役>の電話上のやり取りなんかは、まんま漫画版ナウシカのラストに当てはまると思うんですよねえ。

とまあ、それはまた気が向いたら別の記事にでも書いてみるかもです!

ちなみに理解してない2%のうち1%はまだ分かってないことがいくつかある点を加味したのと、もう残りの1%はまだいろいろ発見したいなという希望の1%でございます

 

 

 

*1:筆者はInception以降の作品は全て少なくとも2回以上映画館で観てるほどのノーラン作品好き

*2:余談ではありますが、この画角フルスケールで見られるIMAXスクリーンというのは日本には2館しかなく(2020年9月時点)一つがグランドシネマサンシャイン池袋、もう一つは私が今回伺った大阪万博記念公園にある109シネマみたいです。筆者は今回、こちらにいけたことで国内のフルスケールIMAXスクリーンは制覇!

*3:パンフレット内参照