パウロ・ディバラ〜宝石の新たな輝き〜

 

1.はじめに

まず私はディバラの大ファンである。なにせ私自身、昨シーズンのユーベの新10番であるディバラの怒涛のゴールラッシュのニュースを知ってユーベの試合を見るようになったくらいだからだ。

La Joya(スペイン語 で宝石の意) ことパウロ・ディバラは現役の選手の中では大のお気に入りである。このことは、この記事をこれから読んでくださる方には知っておいてもらいたい。

また、この記事では今シーズンここまで公式戦20試合を終えた時点の今シーズンのディバラのパフォーマンスについてと、それについて自分の考えを示したい。

 

2.選手としての特徴

今シーズンのプレーを総括する前に、ディバラという選手についておさらいをしたい。ディバラの強みや特徴はなんだろうか?ドリブルがうまい?キープ力がある?パスが上手い?シュートが精確?FKが決まる?私はこれらすべてがディバラの強みであると思う。もちろん弱点もある、上背がないので空中戦はあまり強い印象はない。しかし、上背がないからといってフィジカルが弱いとは思わない。倒れることも多いが、倒れるときはだいたい反則のタックルを受けるのできっちりFKをもらえる選手だ。

 つまるところボールコントロールが上手いのだ。ペレの格言になぞらえるなら、ディバラは”ボールが丸いことを知っている”。ファーストタッチやボールの置きどころがうまいからキープできるし、ボールの蹴り方を知っているからパスやシュートが上手いのだ。特に17/18シーズンのプレーはシュートセンスがズバ抜けていた。FKやPKなどの止まっているボールを打つときも、ワンタッチで打つシュートも、カットインしながら打つシュート、はたまたDFに引きずられながら打つシュート、全てが美しく精確で、そして力強かった。

 

3.18/19シーズンのディバラは輝きを失っているのか?

こんな見出しにしたのには理由がある。ディバラは18/19シーズンが開幕してしばらくの間はどちらかというとネガティブな評価が多かった。ロナウドの加入より居場所がなくなっただの、共存は難しいだの、今のユーベでは構想外だの、そういった評価をたびたび耳にした。 

 今シーズンのユーベの公式戦を全部生で観戦してる自分の意見としては、決してそんなことはないと思う。たしかにゴール数が減ったのは事実だ。しかし、ロナウドという点取り屋がいるなかに二人目の点取り屋が果たして必要なのか?もし、1試合に1点決めてくれる絶対的なFWがいれば、ボールの扱いに長けた万能型のディバラには別の役割を与えるのが至極自然な発想ではないだろうか。そもそもディバラが昨シーズン公式戦で取った26得点の内、8得点はフリーキック(4本)もしくはPK(4本)から生まれたゴールである。今季のユーべのPKキッカーはご存知の通りロナウドでありすでにPKから2ゴール上げている。しかも、フリーキックに関してもディバラよりロナウドが蹴る場面が多い。

 マンジュキッチを例にあげても、16/17,17/18シーズンなどはイグアインがいたこともあり、サイドでのプレーを要求されていた。当然、マンジュキッチ自身のゴール数は下がった。だからといって不調だったかというと全くそうではなく、むしろアッレグリには戦術的に大事なピースとして重宝されていたのである。

 

 4.ディバラの担う新たな役割とは

単刀直入に言えば、ディバラが今季、新たに課されている主な役割とは神出鬼没のリンクマンだと思う。広義的なリンクマンは後衛(DFとMF陣)と前衛(FW陣)を中継する役割だ。しかし、ユーべでの動きは必ずしもそうシンプルではない。ユーべでのリンクマンとしての主な役割は①チームがボールを保持しているとき②自陣で守備→攻撃に転じた瞬間(ポジティブトランジションに分けられる。

 ①のときの役割はウィングのスペースやハーフスペースにボールを供給する、またはそれらのスペースでボールを受けることではないかと今のところ私は分析している。もちろん例外はある。ユーべのこれまでの試合を見ていると、FW陣のトリオ(ロナウドマンジュキッチ、ディバラ)は かなり流動的であるのは明白だ。もはやスタメン発表のシステムなどアテにならないくらい動き回る。

 ヒトが流動的なら必然的にスペースも流動的なのだ。また、ロナウドはサイドに流れてチャンスメイクもする。ロナウドが左や右に流れるならディバラは空いたスペースを埋める。つまり、1試合の中でCF(9番)を任せられるときもあれば、一つ落ちて攻撃的MF(10番)、サイドに張って右ウィング、CF近く1.5列目の役割、偽9番、稀に左サイドのほうに流れるときもある。本当に幅広いピッチのエリアをカバーしている。

 ②のポジティブトランジションのときはすばやくカウンターに移行できるように中継役になるのがメインの役割だ。このときディバラの長短の精確なパスと

簡単にボールを奪われないキープ力は大いに役立つなのだ。

         

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             ディバラのプレイエリア一例

 

●=CB。キエッリーニボヌッチ

☆=右インサイドハーフ(ベンタクール、クアドラードなど)もしくはRSB(カンセロなど)

縦棒=相手最終ライン

①~④=ディバラのプレイエリア。

 

今季のディバラは上の画像でいう①、②、④を流動的に動くことが多い。特に①に顔を出してビルドアップに参加したり、②や④にいる選手にボールを供給したりする。また、マンU戦では①でボールを1回受けたあとオフ・ザ・ボールの動きで自ら最終ライン裏に飛び出す動きなども見られた。

 

以下、私がリンクマンとしてよく動けていた思うウディネーゼ戦とマンU(1st leg )でのプレーを少しだけまとめてみた

www.youtube.com

 

5. まとめ(自論)

今季のディバラに求められている戦術的役割はフィニッシャーではなくリンクマン。パス回しに参加し、タイミング、状況次第でパスやドリブルでアタッキングサードに侵入する切り込み隊長的存在。

フィニッシュの場面に絡むことは昨季と比べて多くはないが流動的なポジションチェンジの一環でゴールに絡むことも可能。 

 個人的にはこの路線で成長すればマンチェスター・シティで活躍するダビド・シルバリヴァプールフィルミーノに近いタイプの選手になれるのではないかと推測する。現時点ではクロスの精度や自分がいざシュートを打つときの質や判断が昨年と比べてやや劣るのは気になるところだ。

 フィニッシュの場面に絡むことは少ないとは言え、最終的にはゴールとアシスト合わせて15くらいはマークするのではないか。

 宝石もそのカットの仕方で輝き方が変わるように、ユベントスのLa Joyaも新しい役割で存分に輝けるのを期待する。