差別行為、ゴールセレブレーション、ボヌッチの発言を巡るカオスな状況について
◇騒動の時系列
①4月3日AM4:00 セリエA第30節 Cagliari 対 Juventus キックオフ
②試合中カリアリサポーターが断続的にブーイングやヤジを飛ばす。(この時点で差別的な行為があったかどうかは不明)
③85分にモイズ・ケーンが2点目をゴール。直後ゴール裏のカリアリサポーターに向けて両手を広げてアピール(画像参照)。
④ゴール裏のカリアリサポーターのテンションが激化。
⑤カリアリのキャプテンを務めているチェッピテッリがサポーターをなにやらなだめている様子がカメラに捉えられる(以下ツイート参照)。
The monkey chants against Moise Kean got so bad that Cagliari's captain had to step in and ask their fans to stop. SHAMEFUL.#CagliariJuve pic.twitter.com/AKsrvMPqVV
— VecchiaSignora GIFs (@VS_GIFS) April 2, 2019
ツイートの日本語訳
"モイズ・ケーンに対するモンキーチャントが目に余るものだったために、カリアリのキャプテンは自分らのサポーターに止めるよう介入せざるを得なかった。恥ずべきことだ。"
注意:モンキーチャント自体は動画内に映っていないため真偽は不明。
⑥マテュイディが激昂。試合が一時中断。
補足:マテュイディは昨シーズンにカリアリサポから差別行為を受けている。
⑦以降マテュイディ、ケーンに対するブーイングはJuveの他選手と比較しても強烈なものに。
⑧試合終了
⑨試合終了直後のSky Sport Italiaインタビューでのアッレグリとボヌッチの発言は以下の通り(日本語訳はAFPBB Newsより引用)
アッレグリ「いつものことで、どこにでも愚か者はいるものだが、同時に普通の人々もいる」「カメラがあるから、特定して入場禁止にすればいい」
ボヌッチ「ゴールは仲間と喜ぶべきだということはケーンも分かっている。別のやり方があったことはね」「あのゴールの後に人種差別的なやじがあった。ブレーズはそれを聞いて怒っていた。自分としてはお互いさまだと思う。モイゼはあんなことをすべきじゃなかったし、ゴール裏もああいうかたちでやり返すべきじゃなかった」「自分たちはプロだ。手本を示すべきで、誰かを挑発すべきじゃない」
⑨'カリアリのトンマーゾ・ジュリアーニ会長も同じくインタビューに回答
トンマーゾ会長 「あれをやったのが(フェデリコ・)ベルナルデスキだったとしても、スタジアムの反応は同じだったはずだ」「あの時点では、誰も何も聞いていなかった。ケアンは過ちを犯したが、まだ19歳だし仕方ない」「聞いたのはほとんどが口笛だ」「ああいう独り善がりな行動は好きではない。このクラブは常に模範だし、人種差別的な行為は常に許さない」
⑩SNSを通じて、海外ユベンティーニをはじめ、ボヌッチの発言"The blame is 50-50(カリアリサポとケーンはおあいこというニュアンス)"に注目が集まりだす。
⑪スタリーングやドルトムントUK版公式などが『ボヌッチ』を非難し始める。
⑫ボヌッチ試合後の発言について、翌日インスタグラムを通じて釈明。釈明文のなかではっきりと差別行為を断固拒否の姿勢を示し、発言が軽率だったと認める。
⑬マテュイディは同僚のピアニッチに対して、今後試合中に差別行為が確認された場合ピッチを去ると明言。
⑭元プロサッカー選手のテュラム選手などもボヌッチ非難に参戦。ボヌッチの発言をレイプされた女性に対して、その女性の身だしなみについて非難しているようなものだと発言。
◆自論
初めに、差別行為というのは許されるべきではないし、もしそれが行われてしまったのであればそれを防ぐ、罰する方法を考えなければならない。と私は考える。
この騒動の不思議な点、不可解な点は、SNSなどの情報伝達ツールを使うユーザーによって騒動のほんの一部の発言(ボヌッチの50-50発言)が恣意的に切り取られ、大波が押し寄せ、本来道徳的に議論すべきトピック(=差別行為の有無とその防止策について)がかき消されてしまったという点だと私は考える。
スターリングやドルトムントの投稿はあまりに低レベルなのでここでは敢えて取り上げない。興味があれば自分らで調べて頂きたい。
これは本当に残念なことだし、このようなことが続く限りカルチョ界から差別がなくなるのは難しいなと思わざるを得ない。ある種、『文化』のような形で根付いてしまっているこの問題は当事者のチーム同士だけではぜったい解決しないと思う。難しい問題だからこそ第三機関であるFIGC(イタリアサッカー連盟)には介入・精査・差別撲滅の制度作りをしてもらいたい。
個人的に論争してほしかった点は以下の通りである。
・ケーンのゴールセレブレーション以前のカリアリサポからの差別行為の有無。(前後関係)
この前後関係についてはカリアリの会長がカリアリサポの"潔癖"の主張として利用しているのでここは本来徹底的に精査すべき。ケーンの行為の意味合いも、差別に対する姿勢を示すものから、ただの挑発行為と全く別物になってしまう。(だからといって挑発行為に対して差別行為で応戦するのは間違っていると思うが、、、)
・差別行為者の特定及び処罰について。
たった2つだけ。これだけシンプルなことなのだ。なのにそれがボヌッチの発言一つに注目がいってしまいカオスな状況になっているのは本当に頭がイタイ限りだ。
しかし、差別行為に対してUEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長は時系列で言うと、この試合の前にもし人種差別行為が発生した場合今後は試合中断・中止も選択肢にあることを明かした。
FIGCには期待薄かもしれないが、このUEFAの会長さんなら事態を良くしてくれるかもしれない。イタリアのサッカーがクリーンなものになることを期待する。